インドにおけるECB(親子ローン)について

January 22, 2022


現地でのオペレーションにおいて、資金調達の必要性が発生した場合の一つのオプションとして、親子ローンがあります。

インドでは、親子ローンは「ECB: External Commercial Borrowings*」とも呼ばれ、インド準備銀行により規制されています。
*厳密には、ECBは日系企業子会社を含むインド国内企業に対してインド国外からの貸付を指しており、親子ローン以外にもインド国外からの銀行借入も含まれます。

適格貸付人とは


ECBには外貨建てとインドルピー建てがありますが、貸付を行うことができるのは、FATF(金融活動作業部会)またはIOSCO(証券監督者国際機構)加盟国の居住者(株主以外の個人を除く)とされています。これにはインド国外の銀行や外国株主も含まれており、それ故に、既述のとおり、インドでは、親子ローンはECBとも呼ばれています。

尚、ECB規制における外国株主とは“25%以上の直接出資”もしくは“51%以上の間接出資”もしくは“親会社が同一の子会社(グループ会社)”と定義されています。


対象借入業種


FDI(外国直接投資)を受けることができる全ての事業体は、ECB規制に基づいてインド国外から借入を行うことが可能です。2019年1月16日以前は製造業、ソフトウェア開発業、インフラ関連企業など、借入対象となる業種が明記されていましたが、2019年1月16日の規制改正以降は、商社やサービス業などを含む、外国投資が制限されていない業種においても、ECBの調達が可能となりました。

借入目的(資金使途)と借入期間


ECBを調達する際には、その目的や借入期間などを明確にしなければいけませんが、以下を目的とした借り入れは認められていません。

① 不動産事業
② 証券市場への投資
③ 企業への出資
④ 上記①~③、下記⑤~⑦を目的とした転貸

また、金額に関わらず、最低平均借入期間は3年と規定されています。

一方、借入期間が以下のとおり別途規制されているものもあります。多くの場合は運転資金を目的とした借入となりますが、その場合も、借入期間に別途規制が設けられています。
加えて、⑤~⑦に関しては、外国株主からの借入であることも条件の一つとなっています。
⑤ 運転資金を目的とする場合:最低平均借入期間5年
⑥ 一般資金を目的とする場合:最低平均借入期間5年
⑦ ルピー建て借入金返済を目的とする場合:最低平均借入期間5年
⑧ 製造業による5千万米ドル以下の借入の場合:最低平均借入期間1年

尚、最低平均借入期間は単純な借入期間ではなく、返済条件等を基にインド準備銀行の制定する規定に基づき算出されます。
(例)平均借入期間5年
 期日における一括返済する条件→ 借入日の5年後に一括返済
 一定期間ごとに一定の金額で分割返済される条件(元金均等返済)→ 借入日の10年後に返済が完了するように設定

借入金額と金利の上限


借入の上限金額は7億5千万米ドル相当と設定されており、金利については以下が設定されています。

上限金利 外貨建て ルピー建て
6ヶ月物LIBOR + 4.5% または その他6ヶ月物インターバンク金利レート+ 4.5% 同期間のインド国債金利

金利については上限が設定されているものの、下限は設定されていないため、借入金利を非常に低いレートで設定することも可能です。
ただし、親子ローンの場合、移転価格の対象取引となるため、年次の移転価格コンプライアンスで報告する必要があります。

ECB借入における手順と必要コンプライアンス


ECBの借入おける手順と必要コンプライアンスは以下のとおりです。

1. ローン契約書の作成(ローン契約書には、借入金額、借入期間、金利、返済スケジュールなどを記載)
2. ローン契約書とForm ECBと呼ばれる申請書を合わせてAD銀行(指定の商業銀行)に提出
3. 申請書はAD銀行経由でインド準備銀行に提出が行われる
4. インド準備銀行よりLRN(Loan Registration Number)と呼ばれる承認番号の付与
5. 借入の実行
6. 借入実行後は、毎月Form ECB2 と呼ばれる月次の資金使途報告書をAD銀行経由でインド準備銀行に提出
*Form ECB、Form ECB2 はいずれもインド公認会計士による証明(署名)が必要となります。


今回は、インドにおけるアセスメントに関してご紹介させて頂きましたが、ご不明点等ございましたら下記のお問い合わせよりお気軽にご連絡ください。

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