アラブ首長国連邦(UAE)におけるグローバルミニマムタックスの導入と多国籍企業への影響
UAEにおけるグローバルミニマムタックスは、2025年1月の導入から2年目を迎えました。2026年現在、本制度は同国で事業を展開する多国籍企業にとって、遵守すべき国際基準として浸透しています。本制度の背景には、国際課税ルールの透明化を目指す世界的な取り組みがあります。多国籍企業に対し、その所在国に関わらず最低15%の税負担を求めることで、国際市場における公正な競争を担保する狙いがあります。
1. 制度の概要と適用範囲(2025年・2026年の判定基準)
グローバルミニマムタックスは、UAE拠点から生じる利益に対する 実効税率が15%を下回る場合、その差額を「トップアップタックス(補充税)」としてUAE国内で徴収する仕組みです。
- 適用対象:
2ヶ国以上の地域で事業を展開し、直近4会計年度のうち2年度において、連結年間売上高が7億5,000万ユーロ(約1,200億円)以上である多国籍企業グループ。
- 判定基準:
2025年度・2026年度の適用判定には、原則として2022年度から2025年度までの財務実績が参照されます。この期間中に売上基準を2回以上超過している場合、15%の最低税率ルールが適用されます。
2. 日本企業における適用上の重要論点(フリーゾーン・支店)
本制度の適用可否を判断する上での重要なポイントは、事業形態や所在地に関わらず適用される点にあります。
-
- 適格フリーゾーン事業者(QFZP)への適用: 企業が「適格フリーゾーン事業者(QFZP)」に該当し、UAEの法人税制度において0%の優遇税率の適用を受けている場合であっても、グループの連結売上高が基準を超えていれば、本制度の対象となります。この場合、法人税率が0%であっても、グローバル最低税率(15%)との差額が「トップアップ税」として課されます。その結果、フリーゾーンにおける税制優遇のメリットは実質的に制限されることになります。
-
- 支店の取り扱い: 現地法人として設立されていない「外国企業のUAE支店」についても、国際ルール上は独立した「構成事業体」として扱われ、個別に評価されます。日本の親会社が売上基準を満たす場合、そのUAE支店の利益にも最低15%の税率が適用されます。
-
- 日本企業への実務的影響: 現在、ドバイおよびUAEで事業を展開している多くの日本企業は、日本の上場企業グループに属しています。親会社の連結売上規模を踏まえると、UAEに所在する主要な日本企業(子会社・支店を問わず)のほぼすべてが本制度の適用対象になると考えられます。
3. 課税権の確保と法的安定性
UAEが本制度を導入した戦略的背景には、「自国の課税権を維持する」という強い狙いがあります。国際的なルール(所得合算ルールなど)では、事業が行われている国で15%の最低税率が課されていない場合、親会社が所在する国がその差額を徴収できる仕組みになっています。UAEは自らグローバルミニマムタックスを導入することで、貴重な税収を国内に留めると同時に、企業に対しては「UAE国内で納税義務を完結させ、他国からの追加課税を回避できる」という実務上のメリットを提供しています。
4. 租税条約による二重課税の防止
UAEは投資環境の安定性を確保するため、幅広い租税条約ネットワークを構築しています。
-
- グローバル・パートナーシップ:
2024年末時点で、UAEは中国、韓国、マレーシアなどを含む142ヶ国と租税条約を締結し、国際基準に合わせたビジネス環境を維持しています。
- グローバル・パートナーシップ:
-
- 日・UAE租税条約:
2014年の発効以来、日本企業における二重課税の回避に加え、投資所得に対する源泉税の軽減・免除の面で、極めて重要な役割を担っています。
- 日・UAE租税条約:
5.コンプライアンスおよび登録義務
| 項目 | 内容 |
| 制度開始日 | 2025年1月1日 |
| 申告・報告 | UAEの会計年度(原則として暦年)に準拠。2025年度分より適用 |
| 登録義務 | 対象となるグループは 最初のグローバルミニマムタックス申告前に連邦税務庁(FTA)への登録が必要 |
| 罰則規定 | 期限内の登録を怠った場合、追加のペナルティが科される可能性がある |
6. 2026年現在における実務上の視点
制度の定着に伴い、企業には単なるルールの把握を超えた高度な税務ガバナンスが求められています。具体的には、法定税率(9%)を含む実効税率の継続的な確認と、国際基準への適応による透明性の確保が求められますが、これらに対応することで、ESG・ガバナンスの観点から企業価値や投資家・金融機関からの評価向上にも直結します。
結論透明性の高い法規制に支えられた安定したビジネス環境こそが、ドバイ・UAEの大きな強みです。今回のグローバルミニマムタックスの導入は、国際基準への整合性を高め、UAEのプレゼンスを一層強化する重要な施策といえます。
弊社は、この新たな環境下における高度な税務ガバナンスへの対応を、専門的な立場からご支援いたします。
ご不明点等がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
