世界の富裕層がドバイ(UAE:アラブ首長国連邦)を選ぶ理由
ここ数年、富裕層(HNI)・超富裕層(UHNI)のあいだで「どこに住むか」「どこに資産を置くか」「どこに法人を設立するか」という拠点の考え方が変わってきています。これは一部の個人の判断というより、国際的な移住統計にもはっきり表れている動きです。
まず、富裕層・超富裕層の定義ですが、分類は「純資産」ではなく、投資可能資産を基準に行われます。
- 富裕層:投資可能資産 100万米ドル以上(約1億5,000万円前後)
- 超富裕層:投資可能資産 3,000万米ドル以上(約45億円前後)
(※1ドル=150円換算の概算)
この定義は、国際的な資産運用レポートや移住統計でも共通して用いられています。
データが示す富裕層移住の実態
ヘンリー&パートナーズが毎年公表している「富裕層の資産移動レポート(Private Wealth Migration Report)」 によると、UAEは2022年以降、世界で最も多くの富裕層を受け入れる国としてトップになっています(2023年は2位)。なかでもドバイは、その受け皿となっている中心都市です。
【富裕層が流入した上位5カ国】
| 順位 / 年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | 2025年 |
| 1位 | UAE +5,200人 | オーストラリア +5,200人 | UAE +6,700人 | UAE +9,800人 |
| 2位 | オーストラリア +3,800人 | UAE +4,500人 | 米国 +3,800人 | 米国 +7,500人 |
| 3位 | シンガポール +2,900人 | シンガポール +3,200人 | シンガポール +3,500人 | イタリア +3,600人 |
| 4位 | スイス +2,200人 | 米国 +2,100人 | カナダ +3,200人 | スイス +3,000人 |
| 5位 | 米国 +1,500人 | スイス +1,800人 | オーストラリア +2,500人 | サウジアラビア +2,400人 |
※ヘンリー&パートナーズのレポートを基に弊社作成
※上段は国名、下段は当該年度に流入した富裕層の人数 ※本資料における富裕層とは、投資可能資産が100万米ドル以上の個人を指す
では、なぜUAEが資産を保有する拠点として選ばれているのでしょうか。
なぜUAEが選ばれているのか
①個人所得税がないUAEでは、個人所得税、キャピタルゲイン税、相続税・贈与税がありません。 資産の形成や運用、そして承継に対して課税がないという点は、富裕層にとって非常に大きな意味を持ちます。
②法人運営の柔軟性100%外資による投資が認められている、低い法人税率、海外送金の自由度など、事業拠点としても高い柔軟性があります。
③地理的・生活面での合理性UAEは欧州・アジア・アフリカの中間に位置し、世界各地へのアクセスが良好です。教育、医療などの生活インフラも整っており、治安も良く、「実際に住む場所」としての好条件を満たしています。④国際都市 上記③のように、地理的にも他国からアクセスしやすいため、欧州、アジア、アフリカなど様々な人種が生活しています。日常生活においては英語が主に話され、国際色豊かなレストランも多く存在しています。
⑤外国人に対する許容性
UAEはもともと外国人比率が高く、自国民(UAE国民)の割合は、長期滞在ビザを保有する外国人を入れた人口の約1割程度です。そのため、外国人に対する許容性が高く、またビザの取得や外国人による不動産取得も容易です。
⑥専門家やプライベートバンク、ファミリーオフィス制度の充実
一定数以上の富裕層が居住する都市では、ファミリーオフィスの制度が整い、プライベートバンク、国際税務や法務の専門家が集まり、投資や事業の機会も増えていきます。UAEの中でもドバイは、まさにその都市の一つです。
日本との比較で見える税制度の違い
日本とUAEを比較すると、個人・家族・企業が保有する資産を、どのように守り・増やし・活用し・承継していくかを中長期的視点で設計する資産戦略において重要となる条件、特に税率が大きく異なります。
| 項目 | 日本 | UAE |
| 個人所得税 | 最大55%(住民税含む) | 0% |
| キャピタルゲイン課税 | 約20% | 0% |
| 相続税 | 最大55% | なし |
| 法人税 | 約23%前後 | 0〜9%(条件による) |
まとめ
どこに住むか、どこに法人を置くか、どこで税務上の居住者となるか。これらは富裕層・超富裕層にとって、所得資産の配分に大きな影響を与える非常に重要な意思決定です。UAEは税制や生活環境の面で、資産形成と承継に適した条件が揃っています。
世界の富裕層はこの視点から移住先を見直しており、UAEは単なる居住地ではなく、富裕層にとっての「資産拠点」としても位置づけられつつあります。
