UAE法人税における適格フリーゾーンとは?

August 3, 2023

UAE内閣は法人税法に基づき、

「適格フリーゾーン企業」「適格所得」「適格活動」および「非適格活動」の用語を定義しました。

本ページはUAEが発表したこれらの言葉の定義を日本語で解説したページになります。 これらの用語はUAE法人税法上、大変重要なものですので、特にフリーゾーンに進出している企業の方は必ずご確認ください。

なぜ重要かというと、この定義に当てはまるか否かによってフリーゾーン企業の法人税率が9%か0%のどちらになるかが判断できるためです。

【法人税率】

まず法人税の税率についておさらいですが

  適格所得 非適格所得
適格フリーゾーン企業 0% 9%

 

  課税所得375,000AED超 課税所得375,000AED以下
適格フリーゾーン企業以外 0% 9%

となります。

UAEの様々なフリーゾーンに日系企業は多く進出していますが、上の表のとおり「フリーゾーン=法人税率0%」とは限りません。

フリーゾーンへ進出している企業も法人税率が0%とみなされるためには、

適格フリーゾーン企業が適格所得を生み出している、と見なされる必要があります。

少し分かりにくいかと思いますが、

まずは以下の適格フリーゾーン企業の定義を見ながら、

自社が適格フリーゾーン企業として資格があるか、その準備ができているかを把握していきましょう。

Step1

【適格フリーゾーン企業とは?】

適格フリーゾーン企業とは以下の条件をすべて満たすもの

①十分な経済実態がある

②適格所得(後述)を生み出している

③9%の法人税の対象となることを選択していない

④移転価格ルールを遵守し移転価格文書を準備する

⑤財務諸表監査書類を準備、維持している(IFRS)

⑥フリーゾーン企業の非適格所得(後述)は、以下のいずれか低い金額を超えないこと:

総収入の5%または5,000,000AED

上記の条件のうち1つでも満たさなかった場合、当該課税期間の開始時およびその後の4つの課税期間において、適格フリーゾーン企業であることを終了させられます。

仮に④の移転価格の準備ができていなかった⑤の監査済財務諸表を準備していなかった

とします。

その企業はフリーゾーンに拠点があろうと、適格フリーゾーン企業と扱われることなく、法人所得税を課される課税対象者として扱われることになります。

そのためフリーゾーン企業はまず自社が適格フリーゾーン企業の資格を得るための事前準備をすることが重要です。

Step2

【適格所得とは?】

Step1の評価が完了した後は、適格所得が何かを確認しましょう。

自社の所得を適格所得と非適格所得に分類することが重要です。

適格所得とは

  1. 他の適格フリーゾーン企業から得た所得(非適格活動から得た所得を除く)ただし、他の適格フリーゾーン企業が関連するサービスまたは商品の受益者である場合に限る。また、そこから派生する付随的な収入も含まれます。
  2. 適格フリーゾーン企業外と行った適格活動から得た所得(ただし、非適格活動として扱われない場合)。これには、そこから派生する付随的な収入も含まれます。

少し適格所得の定義がわかりにくいかもしれませんが、

フリーゾーン内での取引(非適格活動以外)の所得&フリーゾーン外での取引(適格活動のみ)の所得は適格所得に該当し、0%の課税となると考えられます。

次に非適格所得の概念を見てみます。

【非適格所得】

  1. Domestic PEまたはForeign PEに帰属する所得
  2. 不動資産の所有または利用に起因する所得
  3. 非適格活動で適格フリーゾーン企業以外から得た所得

ここでは1ついて解説します。

1.Domestic Permanent Establishmentとは

Domestic Permanent Establishment とは、UAEのフリーゾーン外にある適格フリーゾーン企業の事業所またはその他の形態の存在を意味すると定義されています。

例えるなら、適格フリーゾーン企業がメインランドに支店を持つ場合、その支店は課税所得に対して9%の税金が課されます。

適格フリーゾーン企業のDomestic PEまたはForeign PEに帰属する所得は、法人税(9%)が課される課税所得とみなされます

(課税所得の基本金額基準であるAED 375,000の免除は適用されない)

Step3

そして自社の活動が適格活動にあてはまるか非適格活動なのかを判断します。

【適格活動】

これらの活動には、以下のようなものがあります

商品または材料の製造および加工

株式およびその他の有価証券の保有

船舶の所有および運航

規制当局の監督下にある投資管理

関連当事者に対する本社、財務および金融サービス

航空機の資金調達およびリース

ロジスティクス等

【非適格活動】

これらの活動には以下のものが含まれます:

自然人との取引(ただし、船舶・航空機に関する適格活動および資金・投資管理に関する例外を除く)

規制当局の監督下にある銀行、金融、リース、保険業務

フリーゾーンにある商業用不動産に関するフリーゾーン企業との取引を除く、不動資産の所有または利用

知的財産権の所有または利用

上記の活動に関連する付随的な活動。

以上のStep1~Step3にて、「自社が適格フリーゾーンに位置するか?」→「適格所得に当てはまるか」→「適格活動にあてはまるか」と事前に分類しておくことで、自社の課税所得の範囲を把握することが可能です。