シンガポールにおける会社の清算
February 12, 2020 Uncategorized
シンガポールで事業を始めたものの、諸事情により会社の清算、あるいはシンガポールからの撤退を余儀なくされることもあります。
会社の清算には、以下の方法があります。(「会社法」第 246 ~354条)
■会社が自発的に解散する任意清算(Voluntary Winding Up by the Company)
– 株主による任意清算 (Members Voluntary Winding Up)
– 債権者による任意清算 (Creditors Voluntary Winding Up)
■裁判所の命令判決により強制的に清算する強制清算(Winding Up by Court)
- 任意清算
会社は以下の場合において自発的に清算をすることができます。
- 定款においてその清算の時期が定められている場合
- 株主総会の特別決議で議決された場合
会社の債務をすべて返済できる支払能力を有している場合、取締役会が法定の支払可能宣言を行い、株主総会がこれを受けて清算に入る特別決議を行います。
法定の支払可能宣言を行う場合は、株主による任意清算とし、行わない場合には、債権者主導の任意清算として会社を清算することになります。
- 株主による任意清算
会社は清算決議後12ヵ月以内に会社の債務を全て決済できる支払能力を保有している必要があります。(「会社法」第 293条)
従いまして、会社が債務超過である等の場合においては親会社に対する債務を親会社に放棄してもらい、保有する全資産で全負債を完済できる状況にする必要があります。
第三者に対する債権が多い場合には、親会社が返済し、親会社が子会社に対する求償権を放棄することにより、保有する全資産で全負債を完済できる状況にする必要があります。
会社の清算手続きは清算人(Liquidator)によりなされますが、その清算人は株主総会で選任するため、会社が自由に決定することができます。
多くの場合は会計事務所が清算手続きを一括して代行しています。
- 債権者による任意清算
会社が清算決議後12ヵ月以内に債務を全て決済できる支払能力を保有していない場合に該当します。
清算決議を行った株主総会の同日或いはその後に債権者集会を開催する必要があります。債権者集会開催にあたり、開催日の7日前までに各債権者に対して招聘通知を行います。加えて、債権者集会開催の旨を地元紙を通して公告を行います。
債権者集会においても清算人が選任されることとなりますが、その清算人が株主総会にて選任された清算人と異なる場合には、債権者集会にて選任された清算人となります。
- 清算手続
- 清算に関する決議を行う取締役会を招集 (直近の決算書の準備)
- 取締役会にて会社が清算開始日後12ヵ月を超えない期間内で債務を完済できる旨の宣誓書を作成しACRA(企業会計規制庁)へ登記
- 臨時株主総会を開催し、清算の特別決議を可決
- 清算人を選任
- 臨時株主総会の決議後7日以内にACRAへその旨を届け出る (「会社法」第 290条)
- 臨時株主総会の決議後10日以内に1社以上の地元新聞にて清算決議、支払能力、清算人の任命を公告
- 清算人は会社の資産を換金して負債を返済し、残余財産があれば株主に分配
- 清算人が債権額の立証をするように債権者へ通知
- 税務当局より最終の納税完了通知(Tax Clearance)を入手し、最終株主総会を開催
- 最終株主総会開催通知は、官報及び4紙以上の地元新聞にて公告(清算開始時点で債権者がいない場合は1紙のみ)
- 最終の株主総会終了後7日以内に報告書をACRAへ提出
- 最終株主総会後、3ヵ月を経過した時点で清算が確定 (「会社法」第308条)
- 注意事項
実務上、納税完了通知の入手には時間を要します。過去における申告について疑問点が残る場合、その疑問点が解決されない限りは税務当局は納税完了通知を発行しません。
清算開始前に会社の資産、負債、契約関係を整理しておくことを推奨しております。
事前に行うことができる手続きとしては、清算する会社の事業譲渡や債券譲渡、債務の継承、オフィス(工場)の処分、雇用関係の整理等が挙げられます。
- ACRAによる登記抹消 (Striking Off)
例外として、以下の項目全てに該当する場合にはACRA による登記抹消というかたちで簡易的に清算することができます。
- 設立以後事業活動を行っていない、又は事業を停止して休眠状態である
- 係争中の訴訟案件がない(シンガポール国外も含む)
- 資産・負債を有していない
- 未払法人税、CPF (中央積立基金)、その他政府等への未払債務がない
- 過半数の株主の同意を得ている
上記に該当する場合の清算手続きは以下のようになります。
- ACRAへ申請(オンライン申請)
- ACRAによる承認後、レターが会社住所、取締役・カンパニーセクレタリ―、IRAS、CPF Boardへ郵送される
- 異議申し立て(Objection)がない場合、ACRAは「Government Gazette(官報)」に会社名を公表 (First Gazette Notification)
- First Gazette Notification後60日間、異議申し立てがない場合、ACRAは再度官報に会社名、登記抹消通知、登記抹消予定日を公表 (Final Gazette Notification)